海外生活を始めると、日本国内の投資サービスは多くは利用できなくなります。
私自身も赴任が決まった当初、「これから投資をどうすればよいのか?」と悩みました。
本記事では、私が実際に経験した海外赴任中でも取り組める投資方法を主に3つご紹介します。
これから海外勤務を控えている方や、すでに赴任している方の参考になれば幸いです。
海外赴任中は投資ができない?
ワーキングホリデー、海外留学、海外赴任など、日本を出て海外で生活をする場合は日本の証券会社や金融機関での投資が制限される場合があります。これは日本の「非居住者」に該当するためです。
我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
国税庁 No.2875 居住者と非居住者の区分
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm
1年以上海外で生活する予定がある場合は国外転出届を提出して住民票を抜く必要があり、結果として非居住者となります。非居住者に対する取り扱いは証券会社ごとに異なり、株式や投資信託の積立・売買が制限されたり、商品によっては継続保有ができないこともあります。ルールは比較的頻繁に変更されるため、利用中の証券会社で最新情報をご確認ください。
楽天証券 海外出国のお手続き
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/support/procedures/non-resident/
SBI証券 海外出国時(非居住者)の手続きについて
http://sbisec.co.jp/ETGate/WPLETmgR001Control?OutSide=on&getFlg=on&burl=search_home&cat1=home&cat2=service&dir=service&file=home_non_resident.html
※出国手続きを行わず渡航し、帰国後に問題なく再開できたという例も耳にしますが、各社規約・法令をご確認のうえ自己責任にてご判断ください。
海外生活中にできる投資方法 3選
現地の証券会社で新規口座を開くことも可能ですが、帰国後に口座維持や運用継続が難しい場合もあります。ここでは、海外でも日本帰国後でも続けやすい「投資の継続性」を重視した方法を紹介します。
確定拠出年金・iDeCo
企業型の確定拠出年金や iDeCo は、条件を満たせば海外に住んでいても積立を継続できます。iDeCo は 2022 年の制度改正により、国民年金に加入している場合は海外居住でも加入・継続が可能になりました。
iDeCo公式サイト 2022年・2024年の制度改正の概要
https://www.ideco-koushiki.jp/library/2022kaisei/
- 日本で所得がない場合、掛金の所得控除は受けられません。
- 確定拠出年金・iDeCo は受給時に課税され得るため、結果的に税負担が増える可能性があります。
- 運用益は非課税で積み上がるため、受け取り方やタイミングの工夫を前提に、老後資産形成の柱として継続を検討する価値があります。
暗号資産(仮想通貨)
暗号資産は世界中どこからでも取引でき、取引所間の移動もしやすいのが特徴です。各国で認可された取引所を選び、以下の注意点に気をつけながら投資をしましょう。
- 価格変動が激しく、短期間に30〜50%動くことも。
- 初心者は BTC/ETH など主要通貨に限定し、保有額は総資産の5〜10%程度に抑えるのが無難。
- 居住する国のルールに従って確定申告。
米国証券会社Firstradeの利用
Firstradeは米国以外の居住者でも口座開設ができる数少ない証券会社です。米国の有名企業の株式や信託報酬率が非常に低いことで有名なヴァンガード社のETFに簡単にアクセスすることができます。
https://www.firstrade.com/
実際に投資を始めるにはFirstradeの口座開設に加えて、口座資金の出し入れのために米国銀行口座が必要です。代表的な方法は以下の2種類です。
- 三菱UFJ銀行のU.S. Bank紹介サービスを利用する
- 国際送金サービスWiseで口座開設する
三菱UFJ銀行のU.S. Bank紹介サービスを利用する
三菱UFJ銀行がU.S. Bankでの口座開設の取次をしてくれます。ただし、こちらのサービスの対象として、「米国ビザを取得し(もしくは申請中)、原則90日以内に米国に居住予定(米国籍の方はビザ不要)」という条件があるため、米国以外で生活される場合は利用できない点には注意が必要です。
https://www.bk.mufg.jp/tsukau/kaigai/kouza/us/index.html
三菱UFJは過去に子会社としてUnion Bankを保有しており、2022年12月にUnion BankをU.S. Bankに売却したことで完全に別会社となりました。

将来的にサービスが終了する可能性もあるため、利用時には最新情報を確認してください。
国際送金サービスWiseで口座開設する
Wise(旧TransferWise)は低コストで通貨の両替・国際送金が可能なオンラインサービスです。国際送金に加えて、マルチカレンシー口座(各国の銀行口座)の開設やWiseデビットカードが利用できます。海外に旅行に行ったり、生活する場合は非常に便利ですので口座開設をしておいて損はないでしょう。
https://wise.com
How do I link a Wise account for ACH transfer?
https://help.firstrade.info/en/articles/10223598-how-do-i-link-a-wise-account-for-ach-transfer
Firstradeの国際アカウントの場合、上記のオンラインセットアップが利用できず、マニュアルでの書類提出(Service → Form Center → ACH Electronic Funds Transfer Form)が必要になることがあります。
まとめ
以上、海外生活中でも可能な投資手法として、以下の3つを紹介させていただきました。
- 確定拠出年金・iDeCo:運用益非課税のメリットを活かし、老後資産の柱に。
- 暗号資産:BTC/ETHへの投資・資産比率管理(~10%)でリスクコントロールを。
- 米国証券会社Firstrade:米国株・ETFに直接アクセス。銀行口座や手続きの要件に注意。
日本の投資制度は、海外で生活する日本人に対しては環境整備が十分とは言えませんが、工夫次第で投資は続けられます。これから海外に行かれる方や、すでに赴任中の方の参考になれば幸いです。



将来的に海外でもNISAの積立は続けられるようになると良いですね。
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